ひとり起業の準備で最初にやるのは、「誰の、どんな困りごとを、いくらで解決するか」を一文で書くことです。手続きや道具は、そのあとで足ります。
事業の内容を一文にする
最初に書くのは、次の形の一文です。
「(誰)の(困りごと)を、(方法)で解決して、(金額)をいただく」
たとえば「小さな飲食店の店主の、メニュー表づくりの手間を、デザインの代行で減らして、1件いくらでいただく」のような形です。
最初は粗くて構いません。この一文が書けないうちは、他の準備を進めても、あとで方向が変わって無駄になることがあります。
やらないことを先に決める
準備の段階では、やりたいことが次々に浮かびます。ホームページ、SNS、ロゴ、名刺、広告と、全部に手を付けると、肝心の商品づくりが進みません。
そこで、最初の3か月は「やらないこと」を決めておきます。たとえば、ロゴは作らない、広告は出さない、ホームページは1ページだけにする、などです。
やらないことを決めると、時間とお金を、最初のお客様に向けて使えます。必要になったら足せばよいので、最初に作り込む必要はありません。
準備のしすぎは、始めない言い訳になりやすいので、注意してください。
お金の準備を見積もる
次に、最初の半年に必要なお金を書き出します。
- 毎月の生活費
- 事業に必要な道具やソフトの費用
- 広告や名刺などの集客にかかる費用
- 税金や社会保険料の支払い
収入がゼロの期間があっても生活できるか、を見ておきます。事業を始めてすぐ売上が立つとは限りません。
目安として、生活費の数か月分を手元に残してから動き出す人が多いです。人によって違うので、自分の状況で計算してみてください。
会社員のまま副業から始めて、収入が安定してから独立する方法もあります。生活の土台を残したまま試せるのが利点です。
辞める前に確認しておくこと
会社員から独立する場合は、辞める前に確認しておきたい点があります。
- 在職中に副業や起業が認められているか(就業規則)
- 退職後の健康保険を、国民健康保険にするか、任意継続にするか
- 年金の切り替え(厚生年金から国民年金へ)
- 失業給付の対象になるかどうか(開業すると対象外になる場合があります)
どれも、退職のあとに慌てて調べると、期限に間に合わなくなることがあります。先に役所やハローワークで確認しておきましょう。
また、前の勤め先と競合する仕事を始める場合は、退職時の取り決めがないかも確かめます。トラブルにならないよう、契約書や就業規則を読み返しておいてください。
手続きを済ませる
個人事業として始めるなら、基本の手続きは次のとおりです。
- 税務署に開業届を出す
- 青色申告を使うなら、承認申請書を出す
- 事業用の口座を分けて用意する
- 国民健康保険や年金の切り替えを確認する(会社を辞める場合)
開業届と青色申告承認申請書は、同じ日に出すと手間が少なくて済みます。会社を辞める場合は、健康保険と年金の手続きも、期限があるので早めに確認してください。
業種によっては、許可や届け出が必要な仕事もあります。食品、中古品の売買、介護などは、事前に管轄の窓口に確認します。
最小限の道具をそろえる
道具は、最初から全部そろえる必要はありません。仕事に必須のものだけ用意します。
- 連絡用のメールアドレス(事業専用のもの)
- 見積書や請求書を作る手段
- 日程を管理するカレンダー
- お金の出入りを記録する帳簿
高価な機材やソフトは、売上が立ってから買い足しても間に合います。まずは今あるもので始め、足りなさを感じてから足します。
最初のお客様を決める
事業の準備のなかで、いちばん後回しになりやすいのが、最初のお客様探しです。
準備が整ってから探し始めると、時間がかかります。事業の一文が書けた時点で、身近な人に話してみるところから始めましょう。
知り合いに「こういう仕事を始めようと思っている」と伝えるだけでも、紹介の糸口になることがあります。無理に売り込む必要はありません。
最初のお客様は、小さな仕事でも構いません。実際に依頼を受けて納品すると、商品の改善点が見えてきます。
準備を進めるうちに、不安が大きくなることもあります。不安は、書き出して小さく分けると、扱いやすくなります。
「お金が足りなくなるかもしれない」なら、いくらまで耐えられるかを数字にします。「お客様が来ないかもしれない」なら、最初の3人にどう声をかけるかを考えます。
続けるための仕組みを先に用意する
ひとり起業は、仕事を受けて、納品して、請求して、集客するところまで、ひとりで回すことになります。忙しくなると後回しになるのが、集客や帳簿です。
そうならないよう、準備の段階で週の時間割を作っておきます。たとえば、午前は制作、午後は営業と事務、金曜は帳簿と振り返り、といった具合です。
時間割がなくても始められますが、仕事の波がきたときに、集客が止まってしまう人が多いです。止まらないよう、集客の時間だけは先に確保しておきましょう。
また、相談できる相手を1人は決めておくと安心です。同じ立場の仲間でも、以前の同僚でも構いません。孤独になりやすい働き方なので、話す相手がいるだけで続けやすくなります。
次にやること
今日のうちにできることを3つ挙げます。
- 事業の内容を一文で書いてみる
- 半年分の生活費と事業費を、紙に書き出す
- 開業届の用紙を国税庁のサイトからダウンロードする
この3つが終われば、準備の全体像が見えてきます。次は、手続きの期限と最初のお客様探しの順番を決めましょう。
準備には終わりがありません。完璧にそろったと感じてから始めようとすると、いつまでも始められなくなります。
目安は、「最初のお客様から依頼を受けても、対応できる状態」です。事業の一文があり、手続きが済んでいて、請求書が出せて、お金の記録をつける準備があれば、始められます。
足りないものは、始めてから補えば間に合います。むしろ、実際に仕事をして初めて、何が足りないかが見えてきます。
迷ったら、小さく始めて、1件目の仕事で学ぶという順番を選んでください。準備に使う時間は、最初の1か月で区切るのがおすすめです。
準備の進み具合は、月に1度、簡単に見直すと安心です。終わったこと、止まっていること、次の1か月でやることを、3行で書き出してみてください。書き出すだけで、足りないものが見えてきます。
最初の半年は、売上よりも「続けられる形を見つける期間」と考えると気が楽になります。収入が思うように伸びなくても、集客の方法や商品の見せ方を試して、うまくいった点を残していけば前に進めます。
税金や社会保険の扱いは変わることがあります。詳しくは税務署や専門家に確認してください。




