自分用の業務マニュアルは、「あとで自分が見て、同じ作業を迷わずに再現できる」ことを目標に作ります。立派な資料である必要はなく、手順を番号で書き出したメモから始められます。将来、人に仕事を頼むときにも、そのまま土台になります。
ひとりで働いているなら、手順は頭の中にあるから不要、と感じるかもしれません。ただ、自分用のマニュアルにも、役立つ場面があります。
- 半年に一度などの、たまにしかやらない作業を思い出せる
- 体調を崩したときや、忙しいときの作業の負担が減る
- 作業の抜けや、やり方のばらつきを防げる
- 外注や、手伝いを頼むときに、説明の手間が省ける
特に、年に一度の手続きや、月に一度の作業は、前回のやり方を忘れていることが多いです。そのたびに調べ直すと、時間がかかります。
また、書き出す過程で、手順の無駄や、改善点にも気づけます。マニュアル作りは、作業を見直す機会にもなります。
作る対象の選び方
最初から全部の業務を書こうとすると、挫折します。次の基準で、対象を選びましょう。
- ミスが起こりやすい作業
- 手順が多く、順番が大切な作業
- たまにしかやらず、やり方を忘れやすい作業
- 将来、人に任せたい作業
たとえば、請求書の発行と送付、納品の手順、月末の経理の作業、お客様の受け入れの流れなどです。
まずは1つだけ選びます。1つ書き終えて、使い勝手を確かめてから、次に進むほうが続きます。
書き方の手順
書き方は、次の順で進めます。
- 実際に作業を行いながら、手順をメモする
- 手順を、番号をつけて並べる
- それぞれの手順に、必要な道具や情報を添える
- 間違えやすい点や、注意点を書き足す
- 実際にその手順どおりに、もう一度やってみる
作業をしながらメモを取ると、抜けが少なくなります。記憶だけで書くと、細かい手順が漏れます。
1つの手順は、1つの行動にします。「見積書を作って送る」は2つの行動なので、「見積書を作る」「見積書を送る」と分けます。
最後に、書いたとおりに、もう一度作業してみます。書いてある内容で迷う箇所があれば、そこを直します。これが、マニュアルの完成度を上げる一番の方法です。
画像や図を使う
文字だけでは伝わりにくい手順は、画面の画像や図を加えます。
- ソフトの操作は、画面を撮影して、押す場所に印をつける
- 書類の書き方は、記入例の画像を添える
- 複雑な流れは、簡単な図(矢印でつなぐ)で示す
画像を使うと、迷いが減ります。ただし、画像が多くなりすぎると、更新が大変になります。ソフトの画面は変わりやすいので、重要な場面にしぼって使いましょう。
お客様の個人情報や、パスワードが画像に写り込まないよう、注意します。画像を共有する前に、隠したい部分に目隠しをします。
置き場所とまとめ方
マニュアルは、必要なときにすぐ開ける場所に置きます。
- 1か所にまとめる(同じフォルダや、メモアプリ)
- ファイル名は、作業名が分かるようにする
- 目次になる一覧を作る
- バックアップを取る
業務の種類ごとに、フォルダを分けると探しやすくなります。たとえば「お客様対応」「経理」「発信」のようにします。
目次になる一覧があれば、全体を見渡せます。どんなマニュアルがあるか、作っていないものは何か、ひと目で分かります。
マニュアルは、完成度よりも「使われること」を重視します。立派な書式に整えることに時間をかけても、開かれなければ意味がありません。短くても、探しやすく、すぐに見られるものが役に立ちます。
使われるマニュアルにするには、作業中の画面の横で開ける場所に置くのがコツです。印刷して貼っておく、デスクトップにショートカットを置くなど、見る手間を減らします。
また、作業の途中で迷ったとき、その場でマニュアルに追記する習慣もおすすめです。「ここで迷った」という記録は、次に同じ作業をする自分への、何よりの助けになります。
手順だけでなく、「なぜその手順なのか」の理由も、短く添えておくと、状況が変わったときに判断しやすくなります。
よくある迷いと答え
Q. 書く時間がありません。
A. 作業をするときに、画面を録画したり、手順をメモしたりしながら進めると、別の時間を取らなくても作れます。
Q. 完璧に書こうとして、進みません。
A. 最初は箇条書きの短いメモで構いません。使いながら、足りない部分を増やしていきましょう。
更新の習慣
マニュアルは、作って終わりではなく、直し続けることで価値が高まります。
作業のやり方が変わったときは、すぐにマニュアルを直します。ツールの更新や、料金の変更、手順の見直しなどがあったときです。
使っていて、分かりにくかった箇所に気づいたら、その場で修正します。後回しにすると、忘れてしまいます。
また、年に一度は、全体を見直す日を決めましょう。使われていないマニュアルは、整理して減らします。
人に渡すときの整え方
将来、外注や手伝いの人に仕事を頼むときは、マニュアルを渡せる形に整えます。
- 専門用語や、自分だけが分かる略語を、分かる言葉に直す
- 前提となる知識や、道具を、最初に書く
- 完成の基準(どうなれば完了か)を、明確にする
- 質問があったときの連絡先を、書いておく
渡す前に、事業の外の人に読んでもらい、不明な点を聞くと、直すべき箇所が分かります。
お客様の情報や、パスワードなどは、マニュアルには書かず、別に安全な方法で伝えます。
次にやること
今日できることは次のとおりです。
- 作業を1つ選ぶ(ミスしやすい、たまにしかやらないもの)
- 次に作業するときに、手順をメモしながら進める
- メモを番号付きの手順に整えて、保存する
まず1つ作って、実際に使ってみましょう。使い心地を確かめて直すことで、他のマニュアルも作りやすくなります。
マニュアルの作り方は、文章に限りません。画面を録画して、声で説明を入れた動画にする方法もあります。操作が中心の手順なら、動画のほうが早く作れて、見る側も理解しやすい場合があります。
動画を使う場合も、個人情報が映り込まないように気をつけ、手順を文字でも簡単に残しておくと、検索や更新がしやすくなります。
作ったマニュアルは、実際に使う場面で試してみて、読み飛ばしてしまう箇所や、毎回迷う箇所をチェックします。そこが、直すべき部分です。月に一度、使ったマニュアルの手直しをする時間を設けると、少しずつ使いやすくなっていきます。手順を短く、行動だけを書くことを意識すると、読み返したときに迷いません。
マニュアルを作ると、自分の仕事を客観的に見られるようになります。何に時間がかかっているのか、どこを省けるのかが見えてきます。
仕事の内容によって、必要な記録や手順は異なります。法令や、取引先との取り決めがある場合は、それに従ってください。




